第2章 承認
藤堂や永倉が互いの飲み比べを始めれば、沖田はいつの間にか涼しい顔でちゃっかりニ杯目を空けていた。
「なあ霧島」
藤堂が、唐突に問いを投げる。
「なんで新選組に入ったんだ?腕は確かみたいだけど、何か訳あり?」
「そうだな」
永倉がぐいと酒をあおり、唇をぬぐう。
「俺も気になってた。素性も知れん奴を背に立たせるのは気持ちのいいもんじゃねえ。どういう事情なんだ?」
場の視線が一斉に霧島に集まる。
静まり返った空気に、盃を持つ手がわずかに震えた。
霧島は一度、目を伏せる。
やがて覚悟を決めたように口を開いた。
「……私の両親は、浪人崩れの賊に斬られました」
言葉と同時に、沈黙が落ちる。
「生き延びたのは、私ひとり。あの日から、剣を学び、仇を討つために生きて参りました」
真剣な眼差しで語る霧島の声音は、淡々としているがどこか鋭い。
胸の奥に未だ残る憤りを抑え込んでいるようだった。
「新選組に入隊して不逞浪士を取り締まり、親の仇を討つ。これが私の入隊理由です」
「なるほどな」
土方が低くうなる。
「復讐心で刃を握る者は少なくねえ。だが……その剣が乱れるときもある」
「ええ、副長のお言葉、肝に銘じます」
それ以上を語ることなく、霧島は再び盃を口へと運んだ。
親の名も、賊の名も、それ以上の詳しい経緯も語らない。
その沈黙こそが、かえって重みを持つ。
沖田がわざとらしく肩をすくめる。
「んー、聞きたいこと濁されちゃったな。でもまあ、秘密は誰にだってあるよね」
「まあいいじゃねえか。霧島がここで共に命を懸けるってんなら、もう仲間だ」
原田の言葉に、近藤が力強く頷く。
「過去よりも、これからどう生きるかだ。これからよろしく頼む!」
「はい」
霧島は深く頭を下げた。