第10章 襲撃
「女のくせに、頑張ってんなあ」
不敵な声が耳に届き、霧島の刀がずしりと重くのしかかる。小さく歯を食いしばり、間合いへ飛び込んできた不知火の拳銃に、刃を合わせて受け止める。
「霧島!」
斎藤の声が背後から響く。
霧島は軽く頷き、集中を切らさずに刃を支えた。
「おいおい、飛び道具は飛び道具で返さねえとな。卑怯じゃねえか」
原田が槍を振り回し、間一髪で不知火の拳銃を弾き飛ばす。
金属音が夜の闇に鋭く響いた。
「原田か……お前も久しぶりだな」
「霧島の相手ばかりしてると、俺の槍に突かれるぞ」
不知火は弾かれた拳銃を軽く回収すると、口元に嗤みを浮かべた。
「はっ、相変わらず軽口ばっかりだな、原田。だが——」
言葉と同時に、不知火の影がぶれる。
まるで風と同化するかのような速さで、再び間合いを詰めてきた。
「来るぞ!」
原田が声を上げ、槍を横薙ぎに振り払う。
鋭い金属音とともに、不知火の拳銃が受け止められるが、その勢いは重い。霧島はその隙を逃さず突き、刀を閃かせた。
「甘ぇな!」
不知火は身を翻し、刃を紙一重で躱す。
返す脚が鋭く霧島の脇腹へ叩き込まれた。
「ぐっ……!」
霧島の身体が宙を舞い、背後の壁へと叩きつけられる。
壁面には蜘蛛の巣状に亀裂が走った。
「霧島!」
斎藤が駆け寄ろうとするが、その前にすっと影が割り込む。
天霧だった。
「言ったでしょう。我々と闘うのは時間の無駄だと」
「退け」
斎藤の眼光が鋭く突き刺さるが、天霧は一切怯まず立ち塞がる。
「ぐっ……くそ……」
その間に霧島が呻きながらも立ち上がる。
痛みを押し殺し、突きを放った。
だが——その鋭い一撃は、天霧の片手にあっさりと受け止められる。
「なっ……」
天霧は眉ひとつ動かさず、霧島の刀を握り止めていた。
刃先はわずかに天霧の手に食い込むが、それ以上は進まない。
まるで鋼鉄の壁に突きを放ったかのようだった。
「……これが、人の力か」
天霧の声は低く、冷ややかだった。
「悪くはない。しかし、我らには届きませぬ」
「離せっ!」
霧島は必死に力を込める。
腕が震え、喉から押し殺した呻き声が漏れる。
それでも一歩も退こうとはしなかった。
「霧島!」
斎藤が叫ぶ。その声に応えるように、霧島は振り返らず、必死に天霧を睨みつける。