第10章 襲撃
そのやり取りを一瞥した土方が、冷ややかな声を放つ。
「話は聞いている。池田屋で沖田や藤堂と刀を交えたのは……お前らだな」
「ほう、耳が早い」
風間は愉快そうに目を細め、口元に不敵な笑みを刻む。
「沖田とやら、あれは人間にしてはなかなか骨のある男だったが……我らから見れば、虫けらに過ぎん」
挑発的な言葉が夜気を切り裂く。
土方の眉がぴくりと動き、その瞳には鋭い光が宿った。
霧島の胸は熱く滾る。理性では挑発に乗るなと叫んでいるのに、脳裏には藤堂と沖田の顔が交互に浮かび、憎悪が止めどなくこみ上げてくる。
「……藤堂さんのお怪我の様子は、いかがでしたか」
その名を口にしたのは、背後に控えていた天霧だった。
低く、淡々とした声音。
霧島の心臓が大きく跳ねる。――この男が、藤堂と闘った張本人。
「武士を愚弄するか」
斎藤の声が闇を裂く。
短い一言。
しかしそこには凍りつくような怒気と、仲間を想う烈しい感情が込められていた。
次の瞬間、張り詰めた空気は一層重くなり、場の誰もが一触即発の気配を肌で感じ取っていた。
風間が鼻で笑い、唇を吊り上げた。
「勘違いするな。貴様らに用はない」
一瞬の間を置き、その声音を低く沈める。
「――我らが探しているのは、女鬼だ」
霧島には「女鬼」が何を指すのか理解できなかった。
だが、土方や斎藤の表情には、ただならぬ確信が浮かんでいる。
「雪村ならここには居ねえ」
土方が静かに言い放つ。
「ほう……隠すというわけか」
風間の目が獰猛に細められる。
その声音には、言葉以上の圧力と嘲りが滲んでいた。
「ならば、力尽くで奪うまで」
風間は一言発すると、刃を抜き放ち、鋭い動きで間合いへと踏み込んできた。石畳を踏みしめる音が夜の静寂に響く。
霧島は瞬時に身を構え、刀に手を添える。
斎藤や土方もそれぞれの間合いを保ち、敵の動きに目を光らせた。
カキンと金属音が響き、受け止めたのは土方であった。
「お前に、雪村は渡さねえ」
「幕府の犬共めが…」
その声に、霧島の背筋がピンと張る。油断は許されない――。