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三番隊の剣士【薄桜鬼】

第9章 嗜血


藤堂は拳を布団の上で握り締め、爪が掌に食い込むのも気づかず、唇を強く噛んでいた。
血の味が口の中に広がる。
それすらも罰のように受け入れた。

「……それでも、またお前を傷つけるかもしれねぇ。仲間を……俺が、自分の手で……」

震える声が、狭い部屋に滲むように広がる。
障子の隙間から射す光が、その横顔を淡く照らしていた。

霧島はその光景に胸を締めつけられ、思わず一歩、畳を踏みしめる。
その音が沈黙を破り、部屋の空気を揺らした。

「なら、その時は私が止めます」

低く、しかし刃のように鋭い響きだった。

「たとえ命を懸けても」

その言葉に、藤堂は目を見開いた。
驚愕と、わずかな安堵と、そして痛みが入り混じる瞳。

「霧島……」

霧島の声は静かだった。
だがその芯には、燃え盛る火のような決意が宿っている。

「羅刹になっても、抗う意志を失わなければ、まだ仲間だと。――私は信じています」

部屋の空気が、重く張りつめた。
藤堂の肩がわずかに震える。その呼吸が速まり、声にならない声が喉で絡まった。

長い沈黙の後、静寂を切り裂くように斎藤が口を開く。
その低く落ち着いた声は、刀の鞘走りのように確かな響きを持っていた。

「……それがあんたの覚悟ならば、俺も背負おう」

藤堂が顔を上げた瞬間、斎藤の眼差しが真っ直ぐに射抜く。
厳しい光を宿しながらも、その奥には仲間を思う温かさが潜んでいた。

「お前が人であろうと羅刹であろうと、俺たちは共に剣を振るう。忘れるな」

その言葉は、藤堂の胸を激しく打った。
喉が詰まり、息をすることすら苦しい。

だが、その苦しさは絶望ではなかった。
滲んでいく涙が、心の奥を熱く洗い流していく。

「……っ……」

言葉にならない嗚咽が、藤堂の喉からこぼれる。
肩を震わせながら、それでも泣き崩れることはしなかった。

障子の外で風が吹き抜け、木々を揺らす音がかすかに響いた。
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