第1章 降谷零と彼女
「華守さん、自分は1度、本庁に戻ります」
「あ、なら私も!残りの皆さんは直帰するらしいので風見さん、一緒に行きましょう」
「はい」
風見さんの運転で本庁に戻る途中、静かな車の中で風見さんが口を開いた。
「降谷さんと陽菜さんは幼なじみなんですよね?」
「はい。彼とはもう、20年以上の仲になります」
そんなに?!と驚く風見にはふと疑問が残る。
20年以上の仲にしては、2人が仲良く話しているところをあまり見かけたことがないのだ。
無言で考えていると、なんとなく自分が思っていることを察知した華守さんが口を開く。
「今、そんなに長い仲なのに仲良いいところを見たことがないって思ってました?」
「い、いえ。自分はそんなっ…」
「ふふっ。風見さんってわかりやすいですよね。私が降谷さんと距離を置きはじめたのは公安に入ってしばらくしてから、起こったとある事件がきっかけでした」
私は風見さんにポツポツと話し始めた。
それを風見さんは黙ってきいてくれていた。
「私と降谷さんの出会いは小学生でした…。警察官だった父親の転勤で、警察学校の関係者が多く集まる地域に引っ越してきた私は慣れない環境に戸惑い、最初の数日は、ずっとひとりぼっちでした」
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「君は転入生?」
そんなある日、私に声をかけてきたのが、彼。
彼に話しかけられた日から私の世界は明るくなった。
「僕は、将来警察官になるつもりなんだ。だから今のうちに、いろんなことを経験したいんだ!」
「零くんも警察官になりたいの?私もだから一緒だね!」
「陽菜も?!うわぁ、嬉しいな!一緒に頑張ろうな!」
「うん!」
思えばあの頃から、彼は誰かを守る強さをもっていた。
だからこそ、彼のそのまっすぐさに、惹かれていったのかもしれない。
警察学校に進んだ私たちは、同じ目標を持ち、同じ公安で日本を守ることを誓い合った。
敵の中に潜り込む日々と、遠くから支える日々を送っていた。
しかし、ある日の任務中…
「お前があの男の女か…」
その言葉を、追っていた組織の男から聞いた時、私は背中に冷たい汗をかいた。
(もしかして私が、彼の足でまといになっている…?)
それから、私は彼との距離を取るようになった。
無理にでも、冷たく接した。
それが、彼を守る方法だと信じて。