第3章 プライベートアイ
「……僕が彼女に伴場さんの身辺調査の途中経過を報告していたとき、彼もその現場に居合わせていたようです」
「一体、なんなんだね。君は……」
目暮警部の鋭い視線に、サングラスの男はたじろいだ。
彼もまた、探偵なのだろう。初音さんと同じように、誰かに調査を依頼された存在だと思う。
「目暮警部、つまり今までの話を整理すると……彼もまた探偵で、依頼主は伴場さん。“初音さんが誰かと頻繁に会っている”と気づいた伴場さんが、浮気を疑って彼女の身辺を探らせたということだと思います」
私は今までのやりとりから推測される関係性を口にした。
「そのとおり。あの密会現場は突き止めたんですが、相手の男はフードを深く被っていて顔は見えず……。ただ、あの日店でこの人の声を聞いたとき、“あの時の声だ”と確信して、それでアイサインを送ったんです」
サングラスの男は観念したように話し、自らが探偵であることを認めた。
さらに、「この安室という男を尾行していたが、あっさり撒かれてしまった」と説明した。
(……まぁ、それは現役の公安警察官が、素人に尾行されるなんてヘマはしないから仕方ないですよ…)
安室さんは苦笑いを浮かべ、ごまかすように視線を逸らした。
さらに話を聞いていくと、初音さんと伴場さんは**同じ養護施設で育った“養子同士”**だったことが明かされる。
「……でもな。俺に依頼してくれればよかったんだよ。こんな優男じゃなくてさ。そうしてれば、アイツも死なずに──」
伴場さんが言いかけたそのとき、安室さんがすかさず口を挟んだ。
「待ってください。僕は、そんな電話していません。それに……酔って女性に絡んでいた程度で、命を絶つほどのことだとは……」
(電話……?確か初音さんは、“泣きながら伴場さんに別れの電話をかけた”って言ってたよね。“さよなら”……あの言葉には、何か意味がある気がする)