第6章 優しい先輩
閉店作業が終わったあとの静かな店内。
いつも優しくしてくれる大好きな先輩に、どうしても伝えたくて告白した。
彼は少しの間沈黙して、ぽつりと口を開いた。
「ごめん、君の気持ちには応えられない」
「そう、ですか……」
心のどこかでは気がついていた。
先輩は誰にでも優しくて、わたしだけ特別なわけではないと。
でも、突きつけられた現実に思考は真っ白になっていく。
「ちゃんは、可愛いし、いい子だから。……俺なんかより、もっといい人がいるよ」
予想通りの答えに、堪えていたものが涙として溢れ出した。
「……ダメだな、俺」
近づいてきた先輩に、そっと抱きしめられる。
そして、ひとつだけ、やさしいキス。
「今だけ、許して」
fin.