第2章 無口めな先輩
「……俺、彼女とか、作る気ないんだよね」
短くて冷たいその言葉に、胸がズキンと痛んだ。
屋上に吹く夕方の風が、制服のスカートを揺らす。
でも、わたしの心は全然揺れない。
もう、がっちり掴まれてしまったから。
彼はしばらくわたしを見て、ぽつりと呟いた。
「……泣くなよ」
泣いてないと、そう言い返そうとしたのに、もう喉が詰まって出てこない。
彼は無言でわたしの前に立って、静かに顔を寄せてきた。
「かわいそうだから」
それだけ言って、わたしの唇をさらっていった。
キスのあと、煙草を取り出し火をつけて、遠くを見ながらこう呟く。
「……俺なんか、やめとけって」
fin.