第42章 『観察』永倉新八編*
「……なあ、ももかちゃんってさ──」
新八さんがわたしの上に覆い被さったまま、目を細めた。
耳元にかすかにかかる吐息が熱い。
そのまま、顎先までつつ、と指でなぞられて──
「俺のこと、見てただけじゃなくて……」
「……」
「触れたくて仕方なかった、だろ?」
「そ、そんなこと……っ」
言いかけた声を遮るように、新八さんが笑った。
そしてその瞳が、まっすぐ、真剣なものに変わる。
「なぁ、目、そらさないで。……ももかちゃんがどんな顔して俺を見てたか、ぜんぶ覚えるから」
唇の端だけで笑いながら、髪をそっと耳にかけられる。
指が頬をなぞり、首筋を撫で、胸元のあたりで止まった。
「このへん、今──どきどきしてる。触れてもいないのに」
「……そんな、じっと見ないでください……」
「だめ。俺のこと見てたんだよな?だから……」
「どれくらい見つめたら、こうなるか……ちゃんと、教えて?」
やさしい声音が、皮膚を這うように響く。
「……っ、ぁ……!」
「やっぱ、ここ……すごい反応だな。俺に見つめられてるだけで、こんなに……?」
顔が熱い。恥ずかしい。逃げたい──けれど。
新八さんの瞳が、じっと覗き込んでくる。
まるで、隠した気持ちや欲望までもすべて、見抜かれてしまうみたいに。
「俺のこと、かっこいいって思ってるのも、好きって思ってるのも、ぜんぶ顔に出てるよ」
「……っ」
「あと、……もっと触れてほしい、って目をしてる」
「──っ、新八さんっ」
「なに?ももかちゃん。……当てられて恥ずかしい?」
耳元で囁かれた声に、身体が震える。
「じゃあ、もっと教えて。……ももかちゃんの感じるとこ、どこなのか」
「あっ、あっ……まって、ちょっと……っ!」
「やだ。俺、見抜いたら、触りたくなる」
「っ──ぁ、あんっ……!」
敏感なところを、まるで知っていたかのように探り当てられ、思わず声が漏れる。
「ん……そこだ。……気持ちいい、んだ?」
「っぁ、も、だめ……見ないで……っ」
「なんで?もっと見せて。俺だけに、ちゃんと」
視線は一瞬も逸らさず、まるで全身を観察するかのように──
「だって……こんな反応してくれるの、俺の前だけだろ?」