第42章 『観察』永倉新八編*
「なぁ、ももかちゃん。さっきからどうした?俺の顔、なんか付いてるか?」
笑いながら言う新八さんに、慌てて首を振る。
「ち、ちがいます!なんでもない、です……」
けれど、その目線は逸らせずにいた。
長く伸びた睫毛、形よく下がった目元、笑うときに覗く白い歯。
何より──時折、真剣な眼差しに戻ったときの、凛とした表情。
「ふーん。じゃあ……なんでもないのに、そんなにじーっと見てたってこと?」
「……はい」
「……なるほどねぇ。そんなに俺の顔、好きか?」
「ち、ちが──っ」
「ふふ、冗談だって。……けど、そんな顔されたら、やめたくなくなるね?」
彼の笑顔が、少しだけ変わる。
いつもの明るさに、どこか熱を帯びた、いたずらっぽさが混じって──
そして、ふいに近づいてきた新八さんは、わたしの頬を軽くつまんだ。
「なぁ……俺の顔のどこが、そんなに気になったんだ?」
「……目とか、鼻とか……」
「目、ね。……こうか?」
ぐっと顔を近づけられ、視界が新八さんでいっぱいになる。
くすくすと笑いながら、両頬を包み込むように手を添えて……
「じゃあ、よく見てろよ。……飽きるほど、見せてやる」
そっと唇が重ねられる。
一度、そしてまた──
やさしくて、でもどこか焦れたような口付け。
「……なんて顔してんの、ももかちゃん。……そんなに感じやすかったっけ?」
「っ……し、新八さん……っ」
「ふふ、だめ。今は俺のこと、見たいんだろ? 最後まで見てろよ……」
そのまま、ももかをそっと押し倒す。
「顔だけ見て済むと思うなよ?」
「え、ちょ──」
「そんなふうに見られたからには、俺もお返しするだろ?」
じりじりと距離を詰めながら、熱っぽく見つめる瞳。
襟元にかかった指が、ゆっくりと衣をほどいていく。
「……こうしてると、ももかちゃんが俺のどこを好きか、全部わかるな」
「そ、そんな、こと……」
「顔も身体も、全部見られてたって思うと……俺も止まんねぇよ」
言葉の合間に交わされる深い口付け。
熱っぽい指先に触れられるたび、ももかの身体が熱く震える。
「今度は俺が観察する番だな。……ももかちゃんの全部、ゆっくり教えてくれよ?」