第42章 『観察』永倉新八編*
優しいのに、深くて、逃れられない愛情。
観察のつもりが、いつの間にか見透かされ、見つめ返され、触れられて。
そして──もう、全部を預けてしまいたくなるほどに溺れていく。
「ももかちゃん……ちょっと、こっち来て?」
新八さんに手を引かれて、少しだけ明るい位置に座らされる。
障子越しの月明かりに照らされた新八さんは、思わず眩暈がするほど色っぽく見えた。
「……そんなにじっと……見ないでください」
恥ずかしくて目を逸らそうとするけれど、逃がさないように顎をそっと指で持ち上げられる。
「見たいんだよ。ももかちゃんのこと、ずっと」
指先が頬をなぞり、耳にかかる髪をやさしく梳く。
まるで宝物でも扱うかのように──とてもやさしく、繊細に。
「……ももかちゃんの顔、ほんとに綺麗だよな。目が大きくて、すぐ潤むし、……ここ、泣いたあとに赤くなるんだよな」
そう言って、目尻にそっと触れる。
まるで、わたしの全部を覚えているような言い方に、胸がきゅっと鳴った。
「恥ずかしい……」
「なんで?俺は好き。……ももかちゃんが照れてる顔も、怒ってる顔も、甘えてくる顔も……ぜんぶ」
そう言って頬に鼻先をぴと、とくっつけられる。
そのまま軽くキスされると、まるで、''見せて見せて''とせがまれているような気分になってしまう。