第41章 『観察』沖田総司編
「ももかちゃんは、そんなに……俺の何を、見てたの?」
その声音は、いつもと同じ穏やかな響き。
けれど、わたしの頬を撫でる指先は、どこかじれったくて……熱っぽい。
「……綺麗な顔、してるなって思って……睫毛とか、唇とか……」
正直にそう言えば、沖田くんはふっと笑った。
「そんなこと言うとね……こうしたくなるよ?」
くすっと笑う声と同時に、やわらかく、けれど逃がさないように──唇が重なる。
何度も、浅く優しく撫でるような口付けが、段々と深くなっていって……
「もう……観察なんて言わせないよ」
「っ、あ……」
唇を離した沖田くんは、そっとわたしの手を取り、布団の上に導く。
「こうしてると、わかるでしょ。俺がどれだけ……ももかちゃんに夢中か」
腕の中に引き寄せられ、仰向けに倒された体に、沖田くんのぬくもりが覆いかぶさってくる。
見上げたその瞳にもう笑みはなく──ただただ、真剣で、熱くて、まっすぐで。
「唇だけ、じゃ、足りなくなってきた」
「……沖田くん」
「見てたのは、ももかちゃんだけじゃないんだよ。俺も……ずっと、見てた。触れたくて……抱きしめたくて……」
「……」
「……許して。止められそうにない」
その囁きとともに、沖田くんの指先が襟元に触れる。
やわらかく着物の合わせをほどく手つきは、焦れたように震えていて──
けれど、どこまでも丁寧で、どこまでもやさしくて。
「……大好きだよ、ももかちゃん。見てるだけじゃ……もう、だめなんだ」
唇、首筋、鎖骨へと──
ひとつひとつ、確かめるように重ねられる口付けに、身体が次第に熱を帯びていく。
「……ねぇ、ももかちゃん」
「ん……?」
「観察って、こういうふうにも、できるんだよ」
「っ……沖田くん……」
「もっと教えてあげる……俺の全部で」
甘く溶けるような口調で囁きながら、沖田くんは──
これ以上ないほど深く、やさしく、わたしをどこまでも翻弄していった。
fin.