第41章 『観察』沖田総司編
「……ももかちゃん?どうしたの、そんなにぼーっとして」
「ぼーっとしてないよ。見てたの」
「見てた?何を?」
ももかは、沖田の顔をじっと見つめたまま言った。
「沖田くんの顔。……やっぱり、すごく綺麗だなぁって」
「……ふふ。ありがとう。でも、そんなに見られると、照れるよ?」
いつも通りの柔らかな笑顔。
だけどももかの目は、彼の唇の動きに、睫毛の揺れに、瞳の奥にまで吸い込まれるように動いていた。
「睫毛、長いね……それに、目のかたちもきれい。光が映って、キラキラしてる……」
「……うん?」
「唇の形も……ちゅんとしてて、ずるいくらい綺麗。……触ってみたい」
ぽつりと呟くと、沖田くんの手が一瞬、膝の上でぴくりと動いた。
「……っ、ねえ、ももかちゃん。そういうの、反則だよ?」
「え?」
「そのまっすぐな目で、そんなこと言われたら……男って、どうなるか知ってる?」
「……知ら、ない……」
「そっか……じゃあ、教えてあげようか」
そう言って沖田くんは、いつもの柔らかい笑みを浮かべたまま、すうっと顔を近づけてきた。
そして──耳元で、低く囁く。
「俺、今……すごく、我慢してるんだよ」
「……っ」
「ももかちゃんの瞳も、唇も、ぜんぶ……ずっと見てるの、俺のほうなのに」
静かな声。けれど、その奥にある深い熱と欲が、はっきりと伝わってきた。
「……もっと見てくれてもいいよ。だけど……それ以上は"責任"取ってね?」
その声と同時に、ふわりと唇が重なる。
甘く、けれど我慢を繋ぎ止めるような、切ない口付けだった。
「ふふ、こんなの……観察じゃ済まないね?」
「……沖田、くん……」
「ももかちゃんが悪いんだからね。もう、とめられないよ?」