第38章 『誘惑×キス』藤堂平助編
何度、重ねても。どれだけ、触れても。
「……っ、ももかちゃん……まだ、足りない」
平助くんの潤んだ瞳が見つめてくる。
その目は、まるで懇願するようで。
なのに、身体は──わたしを強く、深く、抱きしめていた。
「へ、平助くん……さっき、もう……あんなに……」
「ダメ……もっと……もっと、触れたい……」
「……っ」
「だって……ももかちゃんが悪いんだよ……っ」
耳元に、熱を帯びた吐息がかかる。
「先にあんなこと……してきたくせに……」
唇が首筋をたどって、やがて肩口まで。
優しく、でも止まらない熱でなぞられる。
「俺の我慢、壊したの……ももかちゃん、だよ……?」
「へいすけくん……」
声が震える。けど、止められない。
「好き……っ、好きすぎて……足りない……」
平助くんの声が、熱と共に溶けていく。
腰に手がまわされて、ももかの体を包み込むように、何度も──深く、甘く──
「ももかちゃん、やわらかい……あったかい……」
言葉のたびに、優しいキスが降りてくる。
額に、瞼に、頬に。
そして最後に、唇に……やわらかく、深く。
「……ももかちゃん、泣いてる?」
「ち、違う……っ……なんか、嬉しくて……」
「……俺、ぜんぶ伝えたいだけ。ももかちゃんが、どれだけ好きか」
指先が、そっと涙を拭ってくれる。
「ぜんぶ知って……ぜんぶ受け止めて。ももかちゃんのぜんぶ、俺だけのものにさせて……?」
こくりと頷いた瞬間、堪えていた理性は最後の一線を超えた。
「……もう、止めない」
その夜、ももかの身体は''好きの証''で埋め尽くされた。
口付けも、愛しさも、触れ合いも。
どれもが、とろけるように甘くて。
どこまでも深くて──
「もう、朝になっちゃう……」
「ん……でも……まだ、離れたくない」
小さな声で、でも強く抱きしめてくれる。
そしてもう一度、優しい唇が重なった。
「……もう一回、だけ」
「ほんとに、もう一回だけ?」
「無理……やっぱり、止まんない……」
──そしてまた、優しく、激しく、深く。
何度も何度も、''好き''が交わされた。
fin.