第38章 『誘惑×キス』藤堂平助編
夜の屯所。灯りを落とした部屋の中。
「──平助くん、こっち向いて?」
隣の布団に寝転がる平助くんが、きょとんとした顔でこちらを向いた。
「なに?急に……そんな真剣な顔して……」
「……ん。ちょっとね」
ももかは、にこりと笑った。
「平助くんに、してみたいことがあるの」
「え……な、なに?」
どきどきと音が聞こえそうなほど、平助くんの心音が跳ね上がっているのがわかる。
──もう、待てない。
ももかは、そのまま彼に唇を重ねた。
「……っ!」
平助が瞬きをした直後、ももかの舌先がそっと、彼の唇のすき間に触れる。
ほんのわずか──
けれど、熱をもって、柔らかく。
「……っ、ももかちゃ……」
震える声を遮るように、もう一度。
今度は少しだけ深く、触れる。
舌先で彼の舌に触れて──優しく、からめる。
「……~~っ!」
平助くんの身体がびくん、と跳ねる。
ゆっくりと唇を離すと、彼の瞳は潤んでいて、頬も真っ赤で。
……なのに、どこか我慢するように口を閉ざしている。
「平助くん……どうしたの?」
「……ず、るいよ……ももかちゃん……」
「え?」
「そういうの、急にされたら……俺、止まんなくなるって……言ったよね?」
小さく唸るような声が、彼の喉奥から漏れる。
「今の……夢にまで見てたんだから……っ」
次の瞬間──
ぎゅっ、と強く抱きしめられて、布団に引き倒された。
「……ももかちゃん、今の……責任、取ってもらうからね」
「平助くん……?」
「もう、止まらない。……言っても止まんない」
唇が重ねられて、舌が追いかけてくる。
今度は彼のほうから、求められて、愛されて──
「さっきの……どんな気持ちでやったのか、教えてよ。
……身体に、ぜんぶ聞くから」