第36章 『甘味食べ歩き』土方歳三編
夕方、日が傾く頃。
ももかが空を見上げてつぶやいた。
「なんだか、夢みたいな時間でした。土方さんと並んで歩いて、美味しいもの食べて……それだけで、すっごく幸せで」
その言葉に、土方がぴたりと足を止める。
「……そうか」
振り返って、ももかをまっすぐに見つめたその瞳。
「なら、もっと幸せにしてやる。……次は花見でもするか。酒は抜きで、甘いもん持ってな」
「ほんとですかっ?」
「ああ。……ただし」
ぐい、と手を引かれ、人の少ない路地でそっと抱き寄せられる。
「……他のやつの前でそんな顔すんな。甘えていいのは、俺の前だけだ」
「……はい。わたし、土方さんの前でしか、こんなに幸せそうな顔しないです」
「……ふっ。ならいい」
それは、静かに心を満たしてくれるような、
やさしくて、甘くて、
きっと一生忘れない、ふたりだけのお出かけだった。
fin.