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夢のあとさき、恋のまにまに

第8章 『土方歳三 個人ルート』


『静かな夜のさざなみ』


その夜、縁側の障子を少し開けて、夜風にあたっていた。
見上げた空には、少しかけた月が浮かんでいる。

(……なんだか、落ち着かない)

今日一日、いろんな人が話しかけてくれた。
新八さんは屈託なく明るくて、平助くんは無邪気に懐いてきて、斎藤さんは言葉は少ないけど優しかった。

それはありがたくて、嬉しくて……
でも、心のどこかが、ざわざわしている。


(……土方さんは、どう思ってるんだろ)


廊下の向こうから、足音が近づいてきた。
その気配を感じるだけで、自然と背筋が伸びる。


「……こんな時間に、何してる」


月明かりに浮かび上がったのは、土方さんだった。
藍色の羽織を肩にかけ、いつも通り、鋭い視線。


「……眠れなくて、少しだけ。ご迷惑でしたか?」

「別に。ただ、風邪引くなよ」


そう言いながら、土方さんは隣に腰を下ろした。
わたしは息を飲んで、そっと横目で彼を見る。

そのあまりにも整った横顔に、思わず目を奪われてしまう。


「……今日は、随分人気だったな。あいつら、順番におまえの周りをうろついてやがった」

「え、えっと……そんなつもりじゃ……」

「別に責めちゃいねぇ」


淡々とした口調。けれど、ふっと目を伏せた彼の表情は、どこか不機嫌そうに見えた。


(……もしかして、ちょっとだけ、やきもち……?)
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