第33章 『逆ハー×日常』土方歳三編
そして、最後は――土方さん。
「遅ぇぞ」
「す、すみませんっ」
書類の山の中、いつも通り眉間にしわを寄せた土方さん。
でも、お茶を渡した瞬間――
「……ありがとな」
ぽつりとこぼれる声は、やさしかった。
「ももかが茶淹れて回ってるって聞いて、ここには最後に来るだろうと思ってた。……正解だった」
「えっ……」
「他のやつらのとこ行ってたんだろ。……顔が少し、紅い」
「……!」
思わず自分の頬に触れて確かめると、ふん、とそっぽを向く土方さん。
「どうせ、あいつらが甘ったれたことでも言ってきたんだろ」
「え、えっと……」
「――俺の番だ。こっち、来い」
ぐいっと腰を引き寄せられて、膝の上。
腕の中に収められ、背中をあたたかく撫でられる。
「いいか、誰に何を言われても……お前は俺のもんだ」
「ひ、土方さん……」
甘やかすように頬を寄せて、耳元に口づけ。
その温もりで、わたしの頬も熱くなるのがわかった。
「さっきの茶も、美味かった。けど……おまえの口から直接もらう方が、もっといい」
そんな言葉のあとに、
わたしの唇に触れる、深く、長い口付け。
――こんなふうに、春の一日はやさしく、とろけるように過ぎていった。
明日もまた、彼らと過ごせる幸せを静かに噛みしめながら。
fin.