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夢のあとさき、恋のまにまに

第33章 『逆ハー×日常』土方歳三編


穏やかな春の日差しに、なんだか心が暖かくなる。

思い立ったわたしは、各部屋に湯茶を配ってまわろうとしていた。



まずは――沖田くんのいる部屋。

「ももかちゃん!今日は煎茶?僕、甘いのも好きなんだけどなあ」

「ふふ、今日は煎茶だけど、今度は和菓子も持ってくるね」

「ほんと?……そうだ、ももかちゃん。手、ちょっとだけ貸して?」


そっと取られた手に、沖田くんの唇が落とされる。

「……先払いってことで。いつもありがとね」



続いて――斎藤さん。

「斎藤さん、お茶をどうぞ」

「……すまん。助かる」

無口な彼だけど、わたしが淹れたお茶には毎回必ず「美味い」と言ってくれる。


「おまえの手は……不思議だな」

斎藤さんなりの、最大限の褒め言葉。
よく見るとほんの少しだけ、口元が緩んでいた。



次は――平助くん。

「ももかちゃん、お茶ありがとー!今日、ひとり?」

「うん、ひとりで回ってるの。平助くんの分、ちゃんとあるよ」

「嬉しい!あ、じゃあせっかくだし……」


そう言って隣にすとんと座ると、ふわっと寄せられる身体。

「ちょっとだけ、寄りかかっていい?」

「えっ、平助くん……」

「へへっ、……だめ?」


無邪気に笑う顔がまぶしい。
この人に甘えられると、だいたい誰も勝てない。

 

続いて――新八さん。

「よっ、今日も元気そうだな、ももかちゃん」

「新八さんも、鍛錬お疲れさまです」

「お、いい香り……これは、煎茶か?ももかちゃんが淹れるやつは格別なんだよな」


屈託なく笑いながら、さらりと肩を抱かれる。

「今度時間があったら、飯でも連れてってやるよ。町の団子屋、けっこう美味いんだぜ?」

「えっ、いいんですか?」

「もちろん!……ただし、土方さんに見つかる前にな?」


笑顔のままひそっと耳打ちされて、わたしは思わず赤くなった。


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