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夢のあとさき、恋のまにまに

第32章 『かっこいい責め』土方歳三編


のぼせた頭をそっと、優しく抱き寄せられる。

「ずっと、こうしてたいくらいだ」

その低くて優しい声が頭上に落ちて、胸がくすぐったく高鳴った。


「……土方さん」

「ん?」

「……もっと、くっついててもいいですか?」

「……最初からそのつもりだ」


ぎゅうっと、腕の力が強くなる。
膝に座らされるみたいに、土方さんの胸元に体を預けた。


「……土方さんの匂い、落ち着きます」

「おまえ……こうやって甘えてくるときは、ほんとに反則だな」

「え?」

「見てるだけで足りなかったのは……こっちの方だ。顔も、声も、全部。もっと近くで感じたくなる」


耳元でそう囁かれて、顔が熱くなる。


「……さっきまで、わたしが見てたのに……」

「今は俺の番だ」


額に、頬に、唇に。
土方さんの視線と指先がそっと落ちてくるたびに、身体の奥が熱くなる。


「……俺の顔、そんなに好きか?」

「はい。……すごく、かっこいいです」

「ふ。……だったら、今日だけじゃなくて、明日も明後日も……毎日ちゃんと、見ろ」

「……はい」

「俺も毎日、見てやる。おまえの顔を、声を、ぬくもりを……全部、ちゃんと覚えていく」


わたしの手を握ってくれた土方さんの大きな手が、少しだけ熱を帯びていた。


「……こんなに甘い顔、誰にも見せるなよ。俺だけに見せてろ」

「……はい。土方さんだけです」


ぎゅうっと、胸の奥まで包まれるような抱擁。


まるで時間が止まったみたいに、何も言わず、何もせず、ただ静かにくっついているだけの午後。

けれどそれは、誰よりもあたたかくて、優しくて、どんな言葉よりも甘い''ふたりの時間''だった。


fin.
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