• テキストサイズ

夢のあとさき、恋のまにまに

第28章 『ラッキー〇〇』沖田総司編


その日は屯所で小さな宴の準備があり、わたしはその手伝いをしていた。

運んでいた食器が滑ってしまって、咄嗟に受け止めたその拍子に──


「……あっ!」


胸元の帯が少し緩んで、着物の襟がふわりと開いてしまった。


「ももかちゃん?」


ちょうどそこへ現れたのは──沖田くんだった。


「あ……っ、沖田くん……っ!」


とっさに腕を寄せて隠すが、わずかに見える素肌を見て、沖田くんはピタッと動きを止めた。


そして──

「わぁ……見ちゃった」

と、いつも通りの笑顔で口にした。


でも、その頬はうっすら赤く、耳に至っては真っ赤だった。


「そ、それは……今、偶然だから……!」


慌てて背を向けて着物を直すも、沖田は後ろからそっと近づいてきた。


「うん、偶然だってわかってるよ。でもさ……


……すっごく、綺麗だった。

襟元、緩んでるのも……恥ずかしがってる顔も。


ぜんぶ……、すき」


声のトーンが変わる。耳元でそっと囁くその声が甘くて震えるようだった。


「あー……こんなに赤くなっちゃって、どうしよう」


ぎゅっと抱きしめられて、肩に顔を埋められる。


「見えちゃった分、責任とってもらおうかなぁ」


「わたし、悪くないよ……っ」


「でもドキドキしたのは本当だから……もう、知らないよ?」


その夜の沖田くんはいつもより少し大胆で、甘えるように離してくれなかった。



fin.
/ 126ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp