第27章 『理性崩壊』斎藤一編*
その夜――わたしはすでに三度目の絶頂を迎えていた。
「……さいと、さん……っ、もう無理、なのに……」
「……足りない。おまえをもっと、奥まで感じたい」
布団の上で身体を重ねながら、ずっと冷静だった彼がまるで別人のように熱くて、乱れていて。
「もう、だめ……っ」
「おまえが可愛すぎるからだ。声も、表情も、触れた感触も……全部が、俺を狂わせる」
彼の腕の中で何度も貫かれて、腰が勝手に跳ねる。
「……もっと、欲しい。もっと深く、もっと強く、おまえを刻みたい」
低く、掠れた声。
いつもの斎藤さんからは想像できないような、むき出しの欲望。
「さっきから、もう……何度目……?」
「数える余裕はない。……でも、まだ足りない」
「ぁっ……ん、はあ……」
ひと突きされるたびに息が乱れ、快感で目の前が霞んでいく。
視界の奥で、彼の目が潤んでいた。
「おまえが欲しい。……息をするたび、おまえの温度が感じられないと、おかしくなりそうだ」
(……斎藤さん、こんなに……)
冷静で誰にも感情を見せない彼が、わたしだけに、全部をさらけ出してくれている――
「嬉しい……わたしも、斎藤さんじゃなきゃ、いや」
「……だったら、拒むな。感じて、俺だけのものになれ」
腕を掴まれて、脚を抱え上げられて――
また深く、貫かれる。
四度目、五度目、何度目かもわからないくらいに。
「全部、俺が支える。だから、もっと……」
――夜が白み始めたころ。
「……まだ、欲しい。……けど、おまえが壊れてしまう」
「わたし、もう壊れてる……斎藤さんのこと、好きすぎて」
「……俺の負けだ。こんなに溺れるとは、思わなかった」
優しく抱きしめられて、唇を重ねる。
それは、さっきまでの獣のような彼ではなく、ただ一人の男として、わたしを愛してくれている証だった。
「明日も、明後日も、その先も。何度でも、抱く。……おまえが、求める限り」
「……わたしが求めなくても、きっと、斎藤さんが止まらないよ?」
その言葉に小さく笑った斎藤さんが、また唇を落とした――
そして、もう一度深く、身体を重ねた。
fin.