第20章 『独占欲×依存』斎藤一編*
――そして、夜が明ける頃。
ようやく彼の動きが止まり、
わたしの身体を抱きしめながら、ぽつりと呟いた。
「……最低だな、俺は」
「……え?」
「泣かせた。苦しませた。気持ちも聞かずに……
俺は、ただおまえを独占したくて、理性も何もかも捨てて……」
ぎゅっと抱きしめられたまま、わたしは彼の頬にそっと触れた。
「……でも、斎藤さんは、わたしのために、壊れてくれたんでしょ?」
「それでも、あんな風にしていいわけが……」
「わたし、嬉しかったよ。斎藤さんが、わたしをそれだけ強く想っててくれてるって、ちゃんと伝わったから」
「……っ、ももか……」
「だからもう、自分を責めないで。わたしは……斎藤さんが、好きだから」
彼の腕が震える。
そして、まるで何かが崩れるように。
斎藤さんがわたしの胸に顔をうずめて、囁いた。
「……俺を、許すな。こんな俺を……愛してくれるのは、君だけだ……」
「うん、だから……もっと頼っていいよ。わたしだけに、甘えて」
その夜、わたしの優しさに包まれて、
斎藤さんは静かに崩れ落ちていった。
冷静で完璧だった彼は、
わたしの愛に縋るように抱きつき、
やがて――わたしにだけ、依存していく。
「……もう、君なしじゃ生きられない」
そんな言葉を囁く斎藤さんの腕は、
なによりも強く、優しかった。
fin.