第18章 『誘惑×理性崩壊』藤堂平助編*
その日は少しだけ、意地悪したくなった。
いつも明るくて元気で、かわいい顔で「ももかちゃん」って笑いかけてくれる平助くん。
――だけど、わたしは知ってる。
彼の奥にある、男らしい部分も、ぎりぎりで我慢してる顔も。
だから今夜は……わたしからちょっと、誘惑してみようかなって、思った。
「……ねえ、平助くん。暑いね」
夜の部屋、ふたりきり。
わたしは襟を少しだけ崩して、わざと首元を見せる。
「……あ、あのっ……ももかちゃん、ちょっと、近くない……?」
「そうかな?……平助くん、もしかしてドキドキしてる?」
「うっ……そ、それは……」
「……かわいい。ねえ、わたしのこと、ちゃんと女の子として見てる?」
「……っ!……それは……っ、もちろん、見てるよ……!」
一瞬で真っ赤になった彼の顔に、
そっと指を伸ばして、唇をなぞる。
「だったら……どうして、いつも手を出さないの?」
「……っ……!」
「わたし、平助くんなら……されても、嫌じゃないのに」
もう、彼の瞳は揺れていた。
自分を止めてる最後の一線を、ゆっくり崩していく。
「ももかちゃん……本気で言ってる……?」
「うん。本気。……だから、平助くんの"男の顔"……見せて?」
その瞬間、平助くんの瞳が燃えるように変わった。
「……もぉ、しらねぇからな……!」