第14章 🩶斎藤一ルート
「……わたしも……同じ気持ちです」
その言葉を聞いた瞬間、斎藤さんの表情が少しだけ緩んで、
そっと、わたしの身体を胸に引き寄せてくれる。
(あったかい……)
「君に触れるのが、こんなに怖くて、嬉しいとは思わなかった」
彼の手が、ゆっくりと髪を撫で、背をさすり、
そして着物の襟元へと優しく滑っていく。
「震えてる。……やっぱり怖いか?」
「ううん……嬉しいです……」
「……よかった」
彼の口づけは、とても静かで、深くて。
だけどその奥には、言葉よりも熱く激しい想いが詰まっていた。
髪を梳く指、首筋に落ちる唇、
そして布団の中で、ゆっくりと重なっていく心と体。
「おまえの全部を、俺の中に刻みたい。ほかの誰にも、見せない顔を……俺だけにくれ」
「うん……全部、斎藤さんのものだよ」
「……ももか」
名前を呼ばれるたび、心がぎゅっと締め付けられる。
何度も、何度も唇を重ね、肌を確かめ合って、
ふたりの間にはもう、何も隔てるものはなかった。
——夜が明ける頃。
肩を抱きながら、彼が静かに耳元で囁く。
「……俺のそばにいてくれて、ありがとう」
「こちらこそ……」
「俺は生きる。君のために。……何があっても、守ると誓う」
(……この人の隣で、生きていきたい)
言葉は少なくても、伝わる愛がそこにあった。
そして、初めてすべてを委ねた夜は、心の底からあたたかかった。
それは、静かで深く、けして忘れられない夜だった。