第14章 🩶斎藤一ルート
『初めての夜編』*
その日、わたしは斎藤さんとふたりきりで、夜の見回りを終えて戻ってきた。
「ご苦労だったな」
「はい。斎藤さんこそ」
月明かりが静かに廊下を照らす中、ふと彼が立ち止まり、振り返る。
「少し、時間がほしい。……来てくれるか?」
(斎藤さんが、自分から……?)
頷くと、彼は無言で歩き出し、
案内されたのは彼の部屋だった。
「……誰にも聞かれたくない話がある。だから、戸を閉めてくれ」
障子を閉め、灯りを落とすと、室内は仄暗くなる。
わずかな灯心の明かりだけが、ふたりを照らしていた。
「俺は、不器用だ。……言葉も、振る舞いも、たぶん下手だ」
「そんなこと……」
「だから、今日だけは……逃げずに、全部伝える」
斎藤さんは正座したままわたしの前に手を伸ばし、両手で包み込むように、わたしの手を握った。
「……好きだ。ももか」
「……っ」
「今までは、自分の感情を隠していた。……でももう、隠せない」
そのまま、わたしの手をそっと口元に運び、
指先に、ほんのり熱を含んだキスが落ちた。
「俺のすべてを、君だけに捧げたい」
「……斎藤さん……」
「今夜、おまえを抱きたい。……嫌なら、言ってくれ」