第3章 『始まりの夜、優しさに包まれて』
その晩。
畳の部屋にひとり、布団をかぶって横になっていたけど、なかなか眠れなかった。
未来に帰れるかどうかもわからない。こんな夢みたいなこと、あるわけないのに――
(……さびしい)
襖が、そっと開いた音がした。
「ももかちゃん、起きてる?」
沖田くんだった。蝋燭の灯りを手に、心配そうに覗いている。
「……眠れなくて」
「そっか。じゃあ、少しだけ……隣、いい?」
「うん……」
畳に腰を下ろした彼は、わたしのすぐ隣で胡坐をかく。そして、静かに肩を貸してくれた。
「怖かったら、泣いてもいいよ。俺がそばにいるから」
彼の肩に寄りかかった瞬間、ぽろりと涙がこぼれた。
「ありがとう……」
その涙を、沖田くんはそっと指でぬぐってくれた。
「可愛い子に泣かれたら……俺、守ってあげたくなるなぁ」
眠れない夜は、甘い囁きと、優しい体温に包まれて、更けていく――