第11章 💙土方歳三ルート
『夜の街歩きデート編』
日が落ちた後、玄関でわたしを待っていたのは、いつもより少しだけ身なりを整えた土方さんだった。
「来たか。……着物、似合ってるな」
「えっ……ほ、ほんとですか?」
「似合ってるから言った。……変な遠慮すんな」
(こんな時は素直に褒めてくれるの、ずるい……)
ふたり並んで歩く夜の街。
屋台の灯りがにじむ川沿いの道を、土方さんは無言のまま歩く。
でも、ふと風が吹いたとき、そっと羽織をわたしの肩にかけてくれた。
「寒くねえか?」
「平気です。でも……」
「でも?」
「肩、貸してくれたら……暖かいかも」
土方さんは一瞬だけ驚いたようにわたしを見つめたあと、黙って腕を差し出してきた。
(わ……腕を組んでる……!)
「……よくそんな甘えたこと言えたな」
でもその声はどこか楽しそうで、絡める腕に力がこもった。
やがて静かな石畳の通りに入ったところで、土方さんが足を止めた。
「……なあ」
「はい」
「おまえが俺以外の男に笑いかけると、胸の奥がむず痒くなる。……妬けるって、こういう感覚か」
「え……」
「俺は、器用に甘えたり、言葉で口説いたりできねえ。でも、抱きしめるくらいは……できる」
そう言って、わたしの体をすっと抱き寄せた。
ぐっと背中を抱くその腕は、強くて、熱くて。
「……誰にも渡したくねえ」
耳元で囁かれたその言葉が、心の奥にまで届いて、とろけてしまいそうになる。
「なあ、ももか……俺のことだけ、見てくれ」
唇が、そっと触れる。
長く、深くて、息を奪うほどに甘いキス。
離れると、土方さんは目を細めて、ぽつりと言った。
「これから先、もっとしてやる。……逃げんなよ?」