第10章 🩵沖田総司ルート
『初めての夜編』*
その日私は、正式に組の一員として名簿に名を連ねた。
女性が名を連ねることは異例中の異例。
でも、沖田くんがみんなを説得してくれた。
「俺、絶対に守るから。だから……ももかちゃんがここにいても、誰も文句言わせないよ」
ずっと笑顔だった彼が、その夜だけは違った。
「――ももかちゃん。今夜、話があるんだ」
ふたりきりの部屋。
灯りを落とし、彼がわたしの前に正座している。
「これから君は、この組で生きていくことになる。剣も、人の死も、戦も……全部、避けられない」
「……うん、覚悟してるよ」
「それでも、俺は……君を、離したくなかった」
ふいに、彼の手がわたしの手を包みこむ。
その熱が、胸の奥までしみこんでいく。
「君がここにいると決まった時、嬉しかった。……でも、同時に、怖かった。……好きすぎて、失うのが怖かったんだ」
沖田くんが、顔を近づけてくる。
そのままそっと、額に口付けを落として——
「だから今夜は、全部伝える。俺の全部を、君に」
そう言った沖田くんは、ふわっとわたしを抱きしめて、布団の中へと誘った。
肌に触れる彼の指先は、やさしくて繊細で、
でも時折、深く切実な熱を帯びていた。
「……俺さ、君に触れるたび、胸がぎゅってなるんだ。もっと、もっとって、止まらなくなる」
「沖田くん……」
口づけは深く、長く、何度も重なった。
唇を重ねながら、指で髪を梳いてくれる。
「きれいだよ、ももかちゃん。……君を見てると、俺、自分を抑えられなくなる」
彼の声が、低く甘く震えていて。
その声に応えるように、わたしもそっと彼の胸に腕をまわした。
「……この先、何があっても、絶対に離さない。君の隣で、生きる」
「わたしも、沖田くんの隣にいたい。……今までも、これからも、ずっと」
抱きしめ合うたび、重なるたび、ふたりの境界線がなくなっていくようで。
やがて夜が深まり、灯りの消えた布団の中で、沖田くんはわたしの名前を何度も、何度も囁いた。
「ももか……だいすきだよ」
彼の愛はやさしくて、とろけるほど甘くて、
胸がいっぱいになって、涙がこぼれそうになるくらいだった。
――それは、初めてなのにどこまでも深くて、
「ふたりで生きていく」約束の夜になった。