第8章 『土方歳三 個人ルート』
「最後じゃ、嫌です」
わたしのその一言に、土方さんは一瞬だけ動きを止めたかと思うと、そのままぎゅっと抱き込まれ、気づけば彼の胸の中にいた。
「そんなこと言われたら……我慢できねぇだろ」
呟くように言いながら、そっとわたしの頬に手を添える。
月明かりの中、彼の瞳はとても熱くて、でも優しくて、わたしだけを見ていた。
「……好きだ」
「……わたしも、大好き、です」
重なる唇。吸いつくように、長く、深く。
触れ合うたびに、心の奥まで甘くなっていく。
何度も、何度も、愛しさを確かめるように。
その合間に、髪を撫でてくれる手。額に触れる口づけ。首筋にこぼれる熱い息。
すべてが求めてやまなかった、土方さんだった。
「……おまえが望むなら、なんでもする」
「それなら、今だけ──」
言いかけた言葉を、口づけで塞がれる。
「今だけなんて、言うな」
言葉の続きを、彼は抱きしめる腕に込めてくれた。
わたしも応えるように、ぎゅっとしがみつく。
そしてそのまま、心ごと預けるように、土方さんの胸に身をゆだねた。
とろけるような甘さと、ぬくもりに包まれて──
ふたりだけの夜が、静かに流れていった。