第8章 『土方歳三 個人ルート』
『ふたりきりの夜に、名前を呼んで』*
畳の軋む音が、やけに大きく響いて聞こえた。
静かな夜。灯りは落とされ、わずかに障子の向こうから月の光が差している。
布団の中、重なる体温。互いの息づかいだけが聞こえる空間で、土方さんがそっとわたしの手を握った。
「……震えてるぞ」
「……大丈夫、です」
ぎゅ、と指を絡められる。硬くて大きなその手が、わたしの手をやさしく包む。
何度も何度も見てきた手。でも、こうして重ねるのは初めてで。
「ももか」
名前を呼ばれただけで、胸がぎゅぅっとなる。
「土方さん……」
「……これが最後になってもいいくらい、大事にする」
わたしの首筋に顔を埋めるようにして、土方さんは低く、囁いた。