第8章 『土方歳三 個人ルート』
『選んだのは、いちばん不器用な人』
夜。
縁側でひとり月を見ていると、足音が聞こえた。
「……皆に、囲まれてたな」
振り返れば、そこには土方さん。
ただ黙って、煙管をくわえながらこちらを見ていた。
その姿は月明かりに照らされ、思わずぞく、とするほど艶やかな魅力を放っていた。
「見てたんですね……」
「……聞こえてきた。全部、な」
少しの沈黙のあと、土方さんが言った。
「誰を選ぶかはおまえの勝手だ。俺は口を出すつもりはねぇ」
「……じゃあ、どうして来たんですか?」
すると彼は、ゆっくりと視線を外しながら答える。
「……嫌だったからだ」
「え……?」
「おまえが他の男に、好きだって言われてるのを見て。……ひどく、嫌だった」
その言葉に、胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じた。