第57章 『昼間×布団』藤堂平助編
昼下がりの屯所。
静まり返った部屋に、ぽつんと置かれた布団。
そこに寝転がっていたのは、平助くん。
疲れて少し横になるつもりが、眠ってしまったらしい。
「……平助くん?」
布団から顔を出して、すやすやと寝息を立てているその姿を見つけた瞬間、胸がきゅうっとなる。
(かわいい……っ)
我慢できずに、そっと布団をめくって──
こっそり、隣に潜り込む。
体を滑り込ませると、ほんのりと彼の体温が伝わってきた。
こんなに近くで、昼間から二人きりなんて……
(起きたら、怒られるかな……でも)
もそ、と彼が寝返りを打った拍子に、自然と体が触れる。
「……ん、ぅ……」
「平助くん……?」
思わず名前を呼んだ瞬間、瞼がゆっくりと開いて──
とろんとした目で、わたしを見つめてきた。
「……ももかちゃん?」
「ご、ごめんね。起こしちゃった……?」
「……ん、違う。なんで、布団にいるのか……聞こうかなって」
「えっと……その……平助くんの寝顔が、あまりにも可愛かったから……つい」
「……」
「……平助くん?」
「……それ、聞いて、冷静でいられると思う?」
「え」
聞き返すと同時に、ぐっと腰を抱き寄せられる。
あまりの顔の近さに、思わずぎゅっと目を閉じた。
「ももかちゃん……今、昼間って知ってる?」
「し、知ってるけど……っ」
「布団に、二人きりだよ? しかも、ももかちゃんから入ってきたんだよね?」
「ちがっ……違うの、ただ横に……」
「ほんとに、それだけ?」
「平助くんっ……くすぐった──んっ……」
唇が塞がれた。
しかも、すぐには離してくれない、深いキス。
「……こんなことされたら、理性なんて残らないって」
「平助くん、昼間なのに……っ」
「だからこそ、だよ。……ももかちゃんが悪いの」
耳元で囁かれて、くすぐったいのに心地いい。
もし誰かに見られたら……と思うと、背中が甘く震えるのを感じた。
「平助くん……」
「ん、なに?」
「だいすき……」
「……あーあ。ほんと、もう、限界……」
二人きりの布団の中で、昼間だというのに──
何度も、何度も、甘い愛のやりとりを繰り返した。
誰にも気づかれない、小さな世界で。
fin.