第8章 『土方歳三 個人ルート』
『好きって、こんなにも違う』
「ねぇ、ももかちゃん。最近さ、俺のこと避けてない?」
沖田くんがぽつりとそんなことを言ったのは、ある日の昼下がり、中庭。
手にしていた菓子の包みを置いて、彼はじっとわたしを見てくる。
「そんなつもりは……」
ならよかった、と笑って、沖田くんはこう続けた。
「俺、ももかちゃんのこと好きだよ。……ずっと言おうと思ってたんだ」
沖田くんのやわらかな声が、春の光に溶けていく。
その笑顔は変わらず優しくて、だけどその奥には、決して軽くない決意が見えた。
(好き……)
その言葉の重さが、心にぽちゃんと落ちる。
嬉しい。でも、戸惑う。でも、ちゃんと受け止めなきゃ――そう思った、そのとき。
「おいおい、抜け駆けか?」
不意に聞こえたのは、明るく弾んだ声。
振り返れば、新八さんがいつもの調子で笑いながら立っていた。
「俺も言わせてもらおうかな。……ももかちゃんが好きだ」
「え……」
「初めて会った時、''面白い子だな''って思ってさ。そしたら毎日、どんどん目が離せなくなってった。笑ってる顔も、困ってる顔も、全部かわいくって」
冗談みたいな軽い口調。
だけど、笑ってる目の奥は本気だった。
「新八さん……」