第53章 『痺れ薬×我慢』藤堂平助編
「平助くん、汗、すごい……ちょっと襟元、開けるね……」
「~〜っ、ああ……っ」
布団の中で顔を真っ赤にしながら、わたしを見上げる平助くん。
戦闘中に浴びた痺れ薬の影響で、平助くんの身体は一時的に麻痺していて、手足が思うように動かない状態になっていた。
「んん……だめだな、これじゃ熱もこもっちゃうし、肌着も脱がないと……」
「ま、待って……ちょっと待ってももかちゃん!?それはまず……っ!」
「え? なんで?」
着物の隙間から手を入れて、お腹のあたりに指を添えながら汗を拭っていると、彼の息がいつもより荒くなっていく。
「そ、そりゃだって、こんな無防備な状態で……こんな近くて……それで、そんなに優しくされたら……」
「ふふ……かわいい」
「っ、ももかちゃん!今の笑い方、絶対なにか企んでたでしょ……!?」
「んー? してないよ? じゃあ今度は、お顔も拭いてあげるね」
「お、俺の理性を試すな〜〜っ!!」
額を撫でる手、手首に触れる指、そして覗き込む顔が近くなるたびに、平助くんの呼吸はどんどん荒くなっていく。
「な、なんか……ずっとドキドキしてて……やばい、心臓もってかれそう……」
「顔、真っ赤だよ? 薬のせいじゃないよね……?」
「〜〜っ、動けるなら今すぐ押し倒してやるのに……!!!」
平助くんは布団の中で悶え、指先が微かに動くたびに、全力で堪えているのが伝わってくる。
「ねぇ、平助くん。もし体が動くようになったら……どうする?」
「そんなの、決まってんじゃん……」
彼の瞳が、獣みたいに光った。
「ももかちゃん、覚悟しとけよ……?
動けるようになったら、絶対、逃がさないからな……!」