第46章 『酔い×デレ』土方歳三編
「……こんなときじゃねぇと、言えねぇんだよ。だから今日は……たくさん、言う」
「ひ、土方さん……」
そのまま膝の上に抱き寄せられ、お酒の香りが鼻先をくすぐる。
「かわいい。……ほんっとに、どうしてそんなに……息するだけでかわいいとか……反則だろ……」
……完全に酔ってる。
それなのに、抱きしめる腕だけはしっかりしていて、どこまでも甘くて。
「ほら、もっと、こっち。……ちゃんと、顔、見たい」
顔を両手で包まれて、正面から見つめられる。
「……目、まっくろで……頬、すこし赤くて。
なんでそんなに……俺の心、かき乱すんだよ……」
「……そんなの、わたしのほうが言いたいくらいです」
ぽそりと呟いたら、土方さんの目がすうっと細くなって――
ふわりと、額に口付けられた。
「俺が酔ってる間くらい、甘えさせろよ。
……いいだろ?ももか」
「……はい」
「……なあ、好きだよ。……たまんねぇくらい」
その夜。
月明かりの中、酒にほどけた土方さんの声が、何度も耳元で囁かれる。
「ももか……ももか……俺だけの、ももか……」
包み込むように抱き寄せられ、熱い体温と甘やかな言葉に、心も体もとろけていった。
——翌朝。
「…………」
「土方さん、おはようございます。昨日は酔って……」
「……何も覚えてねぇ。あれは全部、酔いのせいだ」
「わたしのこと"かわいい"って、十回以上言ってましたよ」
「〜〜っ、忘れろ。ももかの前で、もう飲まねぇ……!」
照れ隠しのように顔をそらす土方さんの横顔が愛おしくて、また酔ってほしいな……と密かに思うももかだった。
fin.