第46章 『酔い×デレ』土方歳三編
その日、屯所では珍しく、宴席が開かれていた。
いつも厳しい土方さんも、珍しく最初から盃を手にしていて、隊士たちの間でも「副長が飲んでるぞ」なんてざわめきがあがっていた。
(土方さん、ほんとに飲んでる……!)
普段なら周囲を震えあがらせる鋭い眼光の彼が、盃に口をつけては、じんわりと頬を染めている。
(なんか、ほんのり赤い……?)
「副長!もう一杯、どうですか?」
「……うるせぇ。……ももかが、注げ」
「えっ、わ、わたしですか?」
盃を差し出されて、急いで徳利を持つ。
注いでいる間、彼の視線はずっと、真っ直ぐこちらに注がれていた。
「……おまえって」
「はい?」
「こんなに、かわいかったか……?」
(え……えええ……!?)
驚いて顔を上げると、ほんのり赤らんだ頬に、焦点がふんわり揺れている黒い瞳。
戸惑っていると、土方さんがくいっとわたしの裾を引き寄せてきた。
「……今日は、言ってもいいよな。いつも我慢、してるしな」
「な、なにを……」
「ももかのこと、ずっと、かわいいって思ってた」