第1章 目は口ほどに物を言う 金城/甘
「……葵。」
金城君の低い声に心臓が大きく跳ねた。
いつの間にか向かい合うよう座っていた金城君の手が、私の赤くなっているだろう頬を撫でる。
かち合っていた瞳が一瞬逸れたかと思えば、サングラスが外され…真っ直ぐと射抜くような瞳が私を捕らえる。
どんどん近付いて来る金城君に、私はぎゅっと目を瞑った。
ちゅっ。ちゅ、…
額、瞼、頬…、
当てるだけだった柔らかなキスの雨が、唇に到達すると食むようなものへと変わる。
頬に触れていた金城君の手は、気付けば腰に回されていて、角度を変えて繰り返されるキスに彼との距離がゼロになる。
やばいなぁ、もぅこのまま…
ΣΣって!!ダメ、絶対!!
『金城、君…ここ、…通、路っ…///』
僅かに残った理性で金城君の胸を押し返すと、彼は珍しくも余裕の無い表情をしていた。
熱を灯し揺らめく瞳。
きっと今、私も同じ目をしてることだろう。
好きだと、言葉にしなくても伝わったから。
「すまない。あまりに…葵が、可愛い事を言ってくれるから、歯止めが利かなくなった。」
『~っ///』
真っ直ぐだ。本当、この人、直球しか投げない。
…、そりゃ、捻くった変化球なんかより分かり易くって良いけど…。
この顔で、
この目で、
この声で…
どれだけの破壊力持ってんのか少しで良いから考えてみて欲しい。
(じゃなきゃ…、)
『あー…、私、部屋に戻るね。』
私は先程よりも強く金城君を押し返すと、席を立つ。
「…もう、行くのか?」
自然と見上げる形となった金城君は名残惜し気に私を見つめる。
(…っ、…これ以上一緒に居たら、次は私も歯止めが利かなくなるから、絶対無理!!)
私は慌てて金城君の視線を逸らすと、早鐘の如く鳴り響く胸を押さえ、振り返る事無く『おやすみ』を伝えると、逃げるようにして部屋へ戻ったのだった。
end