第1章 目は口ほどに物を言う 金城/甘
「…そうか。」
カチッ。
マウスを動かし、次の作業に移る金城君。
あれ?
『やけにつれない返事だね?…もしかして、私…邪魔?』
もっと食い付いてくると思ってたのに。
「…いや。ただ、小野田にだけ肩入れするのは、どうかと思っただけだ。」
金城君は画面から目を離さずに、掛けているサングラスを指で押さえた。
マネージャーとして不適切って事?
『そういう金城君だって、他の2人にも相当入れ込んでるけど…小野田君には特に肩入れしてるんじゃない。例えば、部室の隅っこに眠ってた年代物の重~いホイールをわざわざ自分で掘り出して、一番安定感無いやつを選別してた、とか?』
「…見てたのか?」
『今みたいに一人で行動してれば、目に付きますよ。一応、これでもマネージャーですもの。』
「…適わないな。」
フッ、と口端を上げる金城君に先ほどの不安は何処へやら。一編に気分が上昇する辺り、私は彼を相当好いているのだと自覚する。
『でも、何で今泉君や鳴子君のように細工してあること言ってあげなかったの?ギアチェンジするまで、自分のせいだと思って随分苦労してたよ?』
「あれは、自分で状況を判断して対処する力をつけさせたかったからだ。…5周を過ぎた所で巻島が教えてしまったらしいがな。」
金城君は表情こそは余り変わらないけれど、その分声色に表れる。
今も納得できてないのが何となく解った。
『…なる程ねー。判断力upは失敗に終わったけど、巻島君との信頼度は上がって絆が出来ました、と。良かったんじゃない?クライマーは2人必要なんだし。信頼関係って大事だもの。結果オーライよ。』
まぁ、そんな事は私が言わなくったって金城君なら解ってる事なんだろうけどね。