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青春から惰性まで(ヒロアカ夢短篇集)

第2章 …punishment【※瀬呂範太】


カフェからマンションまでは5分ほど。

決して遠くは無い距離だが、カフェを出てからすぐ、背後に人の気配を感じた。
ゆっくり歩けば後ろもゆっくり、早歩きすれば足音は早く聞こえた。

後をつけられてる。

ここでマンションに入れば、家がバレてしまう。部屋番号までは分からなくても、それでもマンションがバレるのでさえも嫌だった。

ここは一旦通り過ぎよう、と結論を出したその時、背後の足音は急速にこちらへ近づいてきて、後ろから抱き抱えられた。

「や…!?」

人って、本当に怖い時って「きゃー!」なんて言えない。まずい、殺されるかもと思ったら、なんだか嗅いだことのある香水の匂いがした。

「こんな夜中にひとりで歩くなんて危ねーよ、お姉さん?」

聞きなれた声が耳元で囁かれて、バッと振り向くとマスクをした瀬呂君がいた。
なんだ、彼だったのかと安心したのもつかの間。彼の長い前髪から覗く目は、恐ろしい程に弧を描いていた。

「あ、た、ただいま、です…」

思わず震えてた声に、彼はケタケタと笑った。
そして、やや強引に私の手を取ると、さっき少しだけ通り過ぎたマンションのエントランスに向かった。

「はは、ちょっと怖かった?それはごめんだけど、まずは、からいろいろと事情を聞かないとなー。俺が納得するまで寝かせねーから、腹括れよ」

部屋番号とパスワードを入力してセキュリティを解除しながら、彼は独り言のように話したが、その声色は確実に怒気を孕んでいる。

「…返事は?」

「はい…」

蚊の鳴くような声で返事をすると、ぐいと手首を引っ張られて、エレベーターの中に押し込まれた。

そこから部屋のある階までの時間は地獄のように長く感じた。
部屋に着いて解錠して、背中を押し込まれる。玄関のドアが閉まって、自動ロックの音がすると、彼は私の体を壁際に後ろから押し付けた。

「いた、あ…!?」

「なぁ、なんで今日出かけること、正直に言わなかったわけ?」

ストレートな質問に、私はすぐに答えられなかった。
えっと、と言葉を濁していると、「俺、焦らすのは好きだけど、焦らされるのは嫌いなんだよね」と呟いた。

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