
第2章 …punishment【※瀬呂範太】

駅で友人と名残惜しい別れを終えたあと、終電に揺られながら帰路に着いた。
幸せだったあの時間と、夕方の恐怖のひとときを思い出しながら、ぼおっと明かりの少なくなった街を眺める。
あの時の彼は、完全に怒っていたと思う。
今まで付き合ってきて、酷い喧嘩やすれ違いとか試すようなことはお互いにしてこなかった。
そのうちに私はきっと、彼が傷つかないようにという偽善ではなく、彼ならきっと許してくれると勝手に思い込んで、何の断りもなく半分嘘をついて今日家を出てきてしまったのだ。
きっとこの後、初めて喧嘩をしてしまうんだろうなあと考えていると、電車は最寄り駅に到着した。
普段なら扉が開く前に立ち上がって、誰よりも先に下車するのだが、今日は扉が開いてからゆっくりと立ち上がり、ノロノロと階段を昇って、降りて、改札口を抜けた。
駅からマンションまでは徒歩で7分ほど。
だけど、今日はもう本当に帰りたくなくて、駅の傍にある24時間空いているセルフカフェに入った。
ドリンクサーバーと椅子とテーブルだけが置いてあるスタッフ不在の空間には、パソコンを打つサラリーマンと、話に盛りあがっている顔の赤い女性2人がいるだけだった。
隅っこのカウンター席に腰掛け、荷物を降ろすとサーバーへ向かう。こっちに引っ越してきて1年経つが、初めて入った。絶対使わないと高を括っていたが、まさか利用するとは。
ドリンクサーバーのくせに500円もするカフェオレを注文し、透明なアクリル扉越しに作られるカフェオレをぼーっと見つめた。
ピンポーンと軽快な音がして、出来上がる。扉を開けて取り出し、隅の席へ戻った。
腰掛けてもすぐには飲まず、気晴らしに今日撮った写真をスクロールした。夕方、2人で撮ったツーショットは既に電車にいた時には友人から送られてきていた。
それを見ると思い出す。このあと声かけられたんだったなぁと。
自然とため息が漏れ、湯気が少なくなったカフェオレに口をつけようとした。すると、スマホのバイブと共に通知欄にメッセージアプリのウィンドウが起動した。
送り主は、紛れもなく彼だった。
〝もう帰ってる?〟
返事はすぐにできなかった。帰っていなかったので。
ただ、これ以上ここにいて時間を潰し、彼よりあとに帰宅するのもそれはそれで面倒だなと思い、カフェオレを一気飲みすると、足早にカフェをあとにした。
