第25章 ズルイヒト♭⑦
帰りの電車の中、教授抜きの4人のメンバーでトランプしながら過ごす。
「えー!またアイアイが1番!?」
「レイジは思ってることが顔に出すぎ」
「むむ!このポーカーフェイスの貴公子と言われた僕ちんに...」
「あ、やったー!あーがりっ!」
「わ、私も....」
「おめでとう貴公子」
「えーん!3連続ぅ」
何度やっても勝てない僕の手に、何回目かわからない、最下位の役割であるトランプが集まってくる。御手洗だとメンバーの子が席を立てば、チラとアイアイに目配せする。僕も、とアイアイも席を立つ。
『ちょっとだけ、愛梨ちゃんと2人の時間が欲しい』
彼はきちんと実行してくれた。
席には、僕と愛梨ちゃんだけ。
「れ、嶺二くん「愛梨ちゃん」」
言葉が被る。お、お先にどうぞ、との言葉に甘えて、要件を切り出す。
この後、二人で話したいと伝えたら、了承を得た。
トランプを片付ける僕の手に、力が入る。
彼女に伝える言葉を考えながら、もうすぐ降りる時間がやってくる。
解散して、愛梨ちゃんと大学院までの2人きりの道中、今回の研修会についての話をした。きっと充実したのであろう、いつもより言葉多めに話す彼女の姿に、うんうんと頷きながら車まで歩く。
助手席に乗ってもらって、シートベルトを付けたのを確認してから動き出す。連れていきたい場所があると言えば、彼女はうん、と答えてくれた。
エンジンと風を切る音だけが響く。
もうすぐ、空はグラデーションを描く時間だ。
この時間ならちょうど良いや。目的地は決まっている。
僕が、たまに一人になりたい時に行く場所に
今から、君を連れていく
誰かを連れて来たことなんて、今までないんだけど
君には来て欲しい
多分、僕が素直になれる場所の一つだと思うから
車の中は、エンジン音が聞こえる。