第25章 ズルイヒト♭⑦
「ちょっと歩こうよ」
そう伝えて、浜辺を歩く。
波の音と、後ろから聞こえる砂の音に、なんだか泣きそうになって、君の方を振り返れない。
「れ、嶺二くん!」
「うん?」
「あの、れ、嶺二くんに、話したいことがあって...」
そう言われて、やっと立ち止まる。
君の方を見れば、夕日が反射して、それはとても綺麗で。
やっぱり泣きそうになるのを我慢して、君を見つめた。
君が伝えたい言葉が何か、分かるけど分からない。
怖いんだ。
望む言葉が得られない時に、失うことを考えたら。
「あ、あのね...この間、家の都合で、その....お見合いがあったの」
「...うん」
「その...む、昔の知り合いの子で、色々あって、会うようになったんだけど、あの、その子も私も、結婚するつもりとかなくて...」
「そうなんだ。なんだか仲良さそうだったけど」
「そっ、それは、その...ちょっと相談に乗ってただけで....」
「ふ~ん。僕も相談に乗って貰ってたし、愛梨ちゃんは大変だね」
「っ....ぜ、全然、大変じゃないよ...」
泣きそうな声が聞こえる。
あぁ、どうして、責めるようなことしか言えないんだ。
醜い嫉妬や怒りが止まらなくて、ぐっと噛み締めた。
伝えたいのは、こんな言葉じゃないんだ。
ごめん
「・・・やっぱりダメだな。ほんとに。」
僕も泣きそうになってるのを知られたくなくて、髪をかきあげる。
「...愛梨ちゃん」
「...はい」
「僕ね、すっごく、卑怯なんだ」
「ひ、卑怯...?」
「うん、すっごく臆病で、すっごく卑怯者」
口に出せば、思わず笑ってしまう。
「.....アイアイから、聞いてたんだ。結婚の話は、勘違いなんだって」
「う、うん...」
「でも、本当にその時が来たら、僕は耐えられるかなって」
「え....?」
照らされる夕日が少しずつ暗くなってきて、君の瞳が、僕を写してるのが分かる。
「僕ね、僕のことを好きって言ってくれる子なら、誰でも良いやって、思ってる時期もあったんだ」
君の顔を見れなくて、夕日の方を見た。
「だから、愛梨ちゃんとも、僕に好意を寄せてくれてる子だから、仲良くしようかなって、そんな下心しか無くて」