第25章 ズルイヒト♭⑦
「ボクにも嫉妬するなんて、心ってほんと難しいね」
おやすみ
そう言って、アイアイは瞳を閉じた。
....嫉妬?
そうか、僕が知らないところで、彼女の隣に居るのも、彼女を把握してるのも、嫌なのか。心のモヤモヤには、1度名前を付けると良いと、研修会でも言ってたもんね。どこかしっくりこないその言葉に、おやすみと返して、無理やり目を瞑って蓋をする。眠気は中々こなかった。
「やっぱり観光地は人が多いね」
2日目、元気の良いメンバーさんのお陰で、午前中の自由時間は4人で行動することができた。皆で清水寺まできて、アイキャンフラーイ!だなんて言ってる場合じゃないんだけど、僕の方をチラと見ている愛梨ちゃんとは目が合わせられない。
そんな折、耳に入る凛とした男の声と彼女の声。
「愛梨さん!」
「ま、真斗くん...!」
ばっと声のした方を見れば、愛梨ちゃんと、好青年風の男の姿。
なんだか親しそうな雰囲気に、思わずじっと見つめていたら
「あ!水野さんのお見合い相手!」
「む、ご存知でしたか」
急に、鈍器で殴られたみたい。
結婚は誤解だって言ってたけど、相手はそう思っていないかもしれない。
愛梨ちゃんは、根はしっかりしてるけど、どこか流されやすい面だってある。それに、随分距離が近いんじゃないか。あまり男性と関わらない彼女にしては、親しげだ。
チラリと、2人が、こちらを見た。
笑っている彼と、頬を赤くした、愛梨ちゃんが。
そいつは、愛梨ちゃんにとって、なに?
どす黒い感情が渦巻く中、どこか冷静な自分を感じる。
近くにいたアイアイが、チラリとこちらを見た。
「....アイアイ」
「...なに、レイジ」
「ちょっとお願いがあるんだけど」
握った拳に力が入る。
お土産買いに行こうとの提案に、賛同して、帰り道を歩く。
嫉妬だけじゃない
気持ちを伝えていない僕への
臆病者への、怒りと、寂しさと
多分、独占欲
好きって厄介だね