第25章 ズルイヒト♭⑦
いつもより、少し大きな荷物を持って家を出る。
と言っても歯ブラシと着替えが増えたぐらいだけどね。
教授に聞いた待ち合わせ場所に小走りで向かう。見えてきたのは、僕以外のメンバー。もう揃ってるみたいだ。
「お待たせー!」
ちょっとだけ深く息を吸い込んでから出した声。
みんなが一斉にこちらを向いてくれる。目をまん丸にした愛梨ちゃんの顔が見える。あれ!寿くんじゃん!とご一緒メンバーからの声によろしくね~と、アイアイに絡めば、凄い嫌そうな顔をされたけど慣れたもんだ。
ひとまず愛梨ちゃんの姿を見れて良かった。
研修会なんだから、そりゃ遊びに来てるわけじゃないけどさ。
わかってたことだけど、それはもう、愛梨ちゃんと話すタイミングが無さすぎる。
タメになるお偉い様方の話を聞いたら、その後は食事会、愛梨ちゃんの隣にはメンバーの子がベッタリってこともあって、2人っきりと言うタイミングが無い。
愛梨ちゃんの携帯が無いもんだがら、こっそり、なんてこともできなくて、1日が終わってしまう。どうしたものか、と、資料を読んでるアイアイの隣で、はぁ...と大の字でベッドに寝転ぶ。
「...いっそお手紙でも書いちゃう?」
「...急になに?レイジってほんとに突然だよね」
「いやぁ、いかに文明の利器が有難いか、噛み締めちゃって」
「...研修会終わったら1日休みだから、その日に直しに行くって言ってたよ」
「...そっかー」
「まだ気にしてるんだ」
主語がない会話だけど、充分だったらしい。
電気消すよ、とアイアイが隣のベッドに潜り込む。
はーい、とゴロッと転がれば、アイアイはじっとこちらを見ている。
「そんなに見つめられたら、嶺ちゃん照れちゃうゾ」
「ちゃんと伝えたら?ウザイこと言ってないで」
「....そうだねぇ」
「早くしないと、ホントに足元すくわれるかもしれないよ」
「えー、それはやだなぁ」
ははっ、と乾いた笑いを返しながら、僕の弱い所を付いたアイアイから視線を逸らす。
分かってるんだそんなこと。
決意を固めたタイミングで、すぐに伝えれば良かったんだけど、シチュエーションとかに拘っちゃうタイプなのが裏目に出てしまった。