第25章 ズルイヒト♭⑦
「水野さん、結婚するんでしょ?」
「おめでとう!」
僕の手から、資料がこぼれ落ちた。
それに気がついたのは、周りが僕を心配する声を上げたから。
めんご~と言って慌てて拾い集めるけど、頭の中はそれどころじゃない。
結婚? 愛梨ちゃんが? 誰と?
聞き間違いかもしれない。
でも、話題の渦中に居るのは、どう見ても、僕が想う君の姿で。
真実を確認しようとしたところで、教授がやってきた。
うるさくなる心臓の音を無視して、席に着く。
教授の長話は右から左に、手元の携帯をチラ見する。
ピロン、と届いた宛名はアイアイから。
『水野さん、結婚って本当?』
そんなこと、僕が知りたい。
時間が経つのが遅く感じる。このままグループ別に座ることはわかっていたから、愛梨ちゃんとすぐには話せないだろう。
メールで聞こうか?でも、なんて聞けば良いんだ。
アイアイみたいに、ストレートに伝えて、それでもし、YES、と返ってきたら.....僕は嘘でもおめでとう~、なんて言えない。
キミの隣に、僕じゃない人がいる姿なんて、想像したら吐きそうだ。
きっと、何かの間違いだとは思うけど、僕ちんは聞いてないなぁ~、なんて返事をして、彼女へのメールを打つ。
とりあえず、急遽、明日からの研修会に、僕ちんも参加することになった旨を伝えよう。
しばらくして、ピロンって音がした。画面を見ると、宛名はさっきの彼で
『水野さん、結婚は誤解だって』
そんな一文。ほっと胸を撫で下ろしたら、続けて音が鳴る。
『後、携帯水没して、使えないみたい』
アイアイから予想しなかったお知らせに、少し戸惑う。
そうか、愛梨ちゃんと連絡、取れないのか。
彼女の口から直接聞くまでは、なんだか安心出来ない。
明日の研修会に参加出来るのって、本当にラッキーだったかもしれないや。
アイアイに了解!と伝えて、考える。
早く明日になれ。
そう思いながら、暗くなった窓の外を眺める。
ざわつく胸を抑えながら。