【NARUTO】ごめんなさいから始まる物語【トリップ】
第2章 退院
私の長かった病院生活も終わり、明日退院できると知らされた。
(医療費、払えるかな…)
私は、自分の少ない貯蓄から医療費を払うことができるか、
そればかりを考えていた。
急に入院することになるとは、思ってもみなかった。
というより、自分が生き延びることが計画外だったのだ。
だが、退院の日、医療費は払わなくていいと言われた。
私の存在は“火影様”直轄の案件になっているらしく、医療費は“火影様”が負担してくれるそうだ。
ここ数日でカカシと会話した中で、“火影様”の存在を知った。
この木ノ葉隠れの里には、里を統括する者がおり、それが火影様と呼ばれているあの女性のことだと。
他国との渉外や、里の重大な決定事項は火影様に一任されているという。
私にとっては医療費を払わなくていいことは救いになったが、
どうやら、私の退院後の処遇は火影様に委ねられているとのことだ。
私が他国のスパイだという可能性があれば、投獄されることもありえるだろう。
当たり前だが、ごく一般的な人生を送ってきた七海は投獄などということとは無縁だ。
だが、もし自分が投獄されるとしても仕方がないと割り切れるような気がした。
カカシは少なからず私のことを心配してくれているようで、火影様に私に他害の恐れがないことを説明してくれるらしい。
病院に挨拶を済ませ、カカシに連れられて火影様の元へ向かった。
火影室に行くには長い階段を上らなければならず、怪我が治ったばかりの私はカカシについていくのに必死だった。
カカシは汗一つかかずにスタスタと登っていくものだから、忍の体力はすごいものだ。
「失礼します」
ノックをしてから、カカシは声をかける。
「入れ」
扉を開けると、腕を組んで正面の席に座る“火影様”がいた。
「田中 七海といったな。怪我はもう大丈夫なのか?」
そういって火影様は私の頭からつま先までをじっくり見た。
「はい。おかげさまで…」
医療費を負担してもらったことを申し訳なく思いつつ、失礼があってはならないので無難な回答を返した。