【NARUTO】ごめんなさいから始まる物語【トリップ】
第8章 忍犬との出会い
「ここで大丈夫です」
森を抜けて、住宅街が見えてきたころ、七海から声をかける。
「そう?」
「はい」
カカシは歩みを止め、こちらに向き直る。
「さっきはありがとうね。パックンを連れてきてくれて」
「いえ、お礼を言われるようなことはなにも」
七海は恐縮する。
「君が現れたときは、少し驚いたけどね」
「…私も、驚きましたよ」
そして少し嬉しかった、という気持ちは今は触れないでおこう。
「じゃあ、気をつけてね」
二人はその場で解散した。
七海は家に帰り一息ついたところで、今日の出来事を思い出す。
(まさか、犬が喋るなんてね…)
木ノ葉に来て数か月、それなりに色々知ってきたつもりであったが、まだまだ知らないことが多いことを実感した。
(いつまで、この暮らしをするのだろうか)
この頃、先の見えない不安に苛まれることがある。
現状に不満はない。いや、不満を覚えるほどの隙がないと言ってもいいだろう。
今は考えないようにしよう。
疲れた体に鞭を打ち立ち上がると、そのままシャワーを浴びた。
夏の夜。
家にいる間はつけっぱなしにしている扇風機から、生暖かい風が届く。
ふと、脳裏にカカシの顔が浮かぶ。
あの、右目だけの笑顔。
笑っているようだけど、どこか寂し気な。
何かを求めているようで、諦めているような。
胸のどこかが痛む気がした。
今日はもう寝よう。
沢山歩いて疲れていたこともあり、その日はやけにぐっすりと眠ることができた。