【NARUTO】ごめんなさいから始まる物語【トリップ】
第8章 忍犬との出会い
その日、なんとなく行った本屋さんで好みの小説を見つけた七海は、しばらく店頭で立ち読みした後、その本を購入した。
そのまま散歩でもしようと町はずれの緑地に向かっているとき、何かが目に入った。
気になってよく見ると、10メートルほど先だろうか、動物が柵に引っ掛かってジタバタと暴れているのを見つけた。
どうやら、身に着けている服のようなものが引っ掛かっているらしい。
七海は、助けるために駆け足で向かった。
近づいてみるとそれは、木ノ葉の額当てをつけ、「へのへのもへじ」と描かれた小型犬ほどの大きさの犬だった。
「大丈夫?」
柵の上の方に引っ掛かかって宙づりになる形で暴れていた。
声をかけながら優しく抱きかかえる。
「可哀そうに…」
そう言いながら七海は犬の頭を優しく撫でる。
(…かわいい)
犬好きな七海はふと笑みをこぼす。
そのまま何度か犬を撫で、笑顔で犬の顔を見つめる。
「そろそろ降ろしてくれないか?」
近くで男性の声が聞こえた。
「えっ」
周囲を見渡しても、辺りには人気がない。
「ここだ。お前の腕の中だ」
…え?
「お前が抱いている犬だ」
えーーー!?
「犬が喋った!?」
にわかに信じがたいが、今七海が抱いている犬が声を発しているようだ。
腕の中の犬はバタバタと暴れたあと、七海の腕を振り払ってひょいと地面に降りた。
眉をひそめてこちらを見ている。
「ワンちゃん、喋れるの!?」
「拙者はパックンという。ワンちゃんではない」
やはり、目の前の犬が話しているようだ。
しかしどうしても、脳がすぐには受け入れてくれない。
「話せる犬なんて…」
淡々とした調子で、犬は話し続ける。
「信じられないか?忍の里に住んでいれば、動物が喋ることなどよくあるだろう?」
木ノ葉に来てから、いや今まで生きてきた中で、話す動物に出会うなど初めてだ。
「あの…私、忍に詳しくなくて、喋る動物なんて初めてなんです」
そう言うと、パックンという犬は訝しげにこちらを見つめてくる。
「ふむ、お前は変わったやつだな」
犬はそのまま伸びをして、どこかに立ち去ろうした。