【NARUTO】ごめんなさいから始まる物語【トリップ】
第5章 木の葉の美しき碧い野獣
どうやら、今胸に飛び込んできたこの青年のことを言っているらしい。
取り押さえると言っても、私は忍術も使えないし力もない。
考える間もなく咄嗟に、ぎゅうっと優しく抱きしめた。
何とか落ち着かせようと、頭を撫でながら「よしよし」と耳元で囁く。
「っ!」
すると、みるみるうちに彼は力を失っていった。
そのまま大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
「あぁ…やわらかくて、いい匂い…」
そう言いながら、七海の胸に顔をうずめ、今度は私を抱き寄せるように両腕を腰に回した。
少し、くすぐったい。
「リー!何をしている!!」
追いついた全身タイツの男は私の身体に巻き付いている青年の首根っこを捕み、力いっぱい引っ張った。
「ガイ先生!やめてください!…僕はまだ…」
青年は引っ張られる力に逆らうように、私の腰に回された腕をぎゅうっと締める。
苦しい…。
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結局、三人がかりで青年は引きはがされ、私から離れた。
「うちのリーが迷惑をかけて誠に申し訳ない!!
あなたにはどこかでお詫びをしなければ!」
私は全身タイツの男に勢いよく謝罪されたが、何分声が大きく、周りの注目を一身に集めてしまっていた。
私は何よりも周囲の視線が痛く、早々に立ち去りたかった。
「いえいえ、本当に大丈夫ですから…」
「ですが、あのような破廉恥な行動を…」
先ほどから何度かこのようなやり取りをしているが、このままでは一向に帰してもらえそうにもない。
これ以上取り合っていても埒が明かないと考えた私は、
半ば強引に立ち去ろうと、人通りの少ない方へ小さく駆け出した。
「本当に大丈夫ですから!私はここで失礼します!」
「せめてお名前だけでも…!」
背中からそう聞こえたが、世界を救ったヒーローでもあるまいと、名乗らずにその場から立ち去った。